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2011年9月

古代天皇列伝読了

歴史群像特別編集の「古代天皇列伝」を読みました。

かつて旧・赤本シリーズでは「歴代天皇全史」が、最近歴史群像シリーズ特別編集では「最新古代史論」が刊行されており、内容的にはその両者の論理積をとったような感じです。古代として扱っているのは平安京以前で、天皇としては初代神武から50代桓武までを扱っています。もちろんページ数の都合もあってのことと思われますが、歴代天皇のすべてに記事があるのではなく、ある程度ピックアップされています。無論、欠史八代などはそのそれぞれに記事を立てるのは無理がありますし、読む側としても内容のない記事を立て続けに読まされるのは苦痛ですから、著名な天皇にページを集中するのは妥当な編集方針です。

「最新古代史論」は三王朝交替説には冷淡な姿勢でしたが、本書は三王朝交替説に肯定的です。素人としてはどちらの説が有力なのか今一つ判断が付きませんが、おそらく決め手がない状態なのでしょう。そのような状況下であれば、双方の主張に触れられることは喜ばしいことでもあります。

全体を通して特に突飛な主張はなく、安心して読めると同時にややおとなしい印象もあります。本書は当然天皇が主役なのですが、私は読んでみて面白かったのは古代豪族に焦点を当てた記事。物部氏、蘇我氏は有名ですが、他に中臣氏、大伴氏、久米氏、忌部氏、阿倍氏、葛城氏、三輪氏、巨勢氏、膳(かしわで)氏、和珥氏など、古代史の中でも古墳時代から飛鳥時代にしばしば登場する氏族が取り上げられています。記事内では氏族の由来や本拠地などが詳細に記されており、私はこれらの氏族についてほとんど知識を持ち合わせていないので判断が難しいのですが、謎の多い古代史においてこれらの氏族に関してこれほどまで詳細に判明しているのでしょうか。印象としてはかなり推論が含まれているような感じを受けましたが、一方で非常に大胆であり楽しんで読めました。

さらに興味深い記事として、宮内庁管理の天皇陵墓についての解説記事があります。私自身は宮内庁の「カベ」は古代史研究の学問的発展にとって非常に大きな障害だと思っていますが、筆者(大学教授)は正面きってこれを批判するようなことはしていません。しかし、「その文化財としての価値が充分に学界、ないし社会一般における共通の財産となっていない」という一文に著者の精一杯の主張、学者の本音のようなものがほの見えていると思います。実際天皇陵としての根拠の薄弱なものも多くそのような古墳を厳重に管理していることに税金の無駄遣いを感じたりしますが、むしろ信憑性の高いホンモノの天皇陵こそ学術的には価値が高いのであって、ぜひとも宮内庁には天皇陵を学術研究の対象として開放する英断を下してほしいものだと思います。

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