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2011年8月

坂本龍馬と海援隊読了

新・歴史群像シリーズの第20巻「坂本龍馬と海援隊」を読みました。

本書は2009年12月25日発行ということで、もちろん2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」のタイアップ本です。新・歴史群像では第4巻「維新創世 坂本龍馬」で龍馬を取り上げたばかりだったのですが、やはり商機は逃せないということでしょう、タイアップ本が出ました。

最近特に龍馬研究が進んだというようなこともありませんので内容的に特に新しいものはありません。大河を意識してのことと思いますが、「幕末商社考」という記事があり、ここに岩崎弥太郎が登場します。というか、意外なことにこの記事以外では岩崎弥太郎はほとんど出てきません。

龍馬の素晴らしいところは、押し付けがましいところが微塵もないというところではないでしょうか。幕末という時代は、自分と考えの異なる人物は殺してでも排除する時代だったわけです。実際多くの幕府官吏や学者、思想家が殺され、志士同士でもわずかな路線の違いから殺し合いました。龍馬も自分なりの考えを持ってこの荒々しい時代を生きたのですが、龍馬は相手を殺すようなことは全くしていませんし、それどころか考えの近い人間を集めて集団で威圧するようなこともしていません。亀山社中や海援隊を率いてはいましたがそれを政治的に利用するようなことはなく、経済的な支援者は当然いましたが志士としての活動はほぼ一匹狼でした。有力な大藩の藩主やその側近、幕府高官、志士の大物と会うときも大抵単独もしくはごく少人数です。しかし、かといって自分の力だけを信じているような人でもなく、たとえば亀山社中や海援隊の運営はその大部分を同士に任せていたようで、トラブルのときなどいざというときに出ていくリーダーであったようです。

つまり龍馬は人を率いるリーダーとしての能力を持っていながら、政治の場では数の力による強引なやり方を採用せず、もっぱら説得による合意を重視しました。このようなやり方はある意味では理想論であり、現実には暴力もカネも用いずに利害の一致しない相手から合意を引き出すのは極めて困難なのですが、龍馬はそれをやってのけています。非常に稀な交渉能力の持ち主だと言えるでしょう。そしてその交渉能力は小手先のテクニックではなく、龍馬の人格や生き方と深く繋がっているところに龍馬の人気の源泉があるのだと思います。

最初に記載しました通り、この本は2009年の暮れの発行なのですが、この本を最後に新・歴史群像シリーズは1年半以上発行されていません。今年の大河ドラマ「江」のタイアップ本は歴史群像シリーズ特別編集という位置付けでしたので、新・歴史群像シリーズではありません。確かに旧歴史群像シリーズから「新」に移行したときも具体的に何か新しい編集方針などが示されたわけではなく、単なる看板の掛け替えの印象は拭えないものがあり、読者としては「旧」であっても「新」であっても「特別編集」であっても違いはよく分かりません。はっきり言って「どうでもよい」というのが正直なところです。今後、シリーズの新展開はあるのでしょうか。

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